原状回復ガイドラインを事業者用にわかりやすく解説
公開日:2023/03/01
原状回復とは、「ある事実がなかったとしたら本来存在したであろう状態に戻すこと」と記されています。入居者が退去する際に、不動産事業者が必ず行う作業の一つです。実際、原状回復の理解度は低く、入居時の取り決めが重要となってきます。今回は、原状回復ガイドラインを事業者用にわかりやすく解説していきます。
原状回復ガイドラインとは?
国土交通省が提供している原状回復ガイドラインは、賃貸契約の際に入居者不利にならないように定められています。
原状回復ガイドラインは、
「通常の使用による損耗や経年劣化は賃主負担としない」
「故意・過失・注意義務違反による汚れや傷、破損は貸主負担とする」
「通常ではない使用の損耗や毀損は借主負担とする」
などとなっています。この定義を基に原状回復の範囲やどちらが負担するかを検討します。
事業者が抑えておくべき原状回復のポイント
事業者が抑えておくべき原状回復ガイドラインには、どのようなポイントがあるのでしょうか?
暮らしの中で発生した汚れやキズ
借主が普通に暮らしていて発生した汚れやキズなどは、貸主の負担になります。(家具の設置による床の凹み・直射日光による床や壁の変色など)
設備機器の寿命による故障
設備機器の寿命による故障については、借主は費用を負担する必要がありません。
建物の劣化と損耗
畳や壁の変色、床の変色、雨漏りなどは、経年による劣化となって貸主の負担になります。
次の入居者のための準備
次の入居者のための準備(鍵や網戸、畳などの交換・部屋や内装のハウスクリーニング・エアコン内部の洗浄など)は、貸主の負担になります。
不注意でついた汚れやキズ
借主の不注意によってついた汚れやキズは、借主の負担になります。(食べ物などのシミ・運搬でついたキズ・タバコのヤニ・落書きなど)
特約事項
貸主と借主が納得して決めた特約は、原状回復ガイドラインよりも強い効力を持っています。しかしあまり理不尽な内容は裁判所で認められません。
トラブルを未然に防ぐチェック
貸主や管理会社はトラブルを防ぐために、損耗・毀損のチェックリストを作成しておくことが賢明です。
冷暖房や水道、雨漏りの故障
冷暖房や水道、雨漏りなどの故障のメンテナンスは貸主の負担となり、緊急性がある場合のみ業者を手配することが可能です。
負担割合の根拠を入居者にしっかり説明しよう
原状回復ガイドラインでは、経年劣化・通常損耗は借主が支払う賃料の中に含まれていると記されています。そのため退去するときに借主が経年変化と通常損耗を支払うと二重に支払うことになってしまいます。
このような二重支払いを防ぐために、借主の入居年数が長いほど、経年劣化と通常損耗の負担割合を減らす方針をたてています。つまり物件や設備の経過年数と入居者の入居年数によって、負担割合が変化するということです。物件や設備は年数が経つと劣化するのが当たり前なので、入居者が負担する割合は減少します。
貸主による原状回復工事
貸主が適切な原状回復工事を怠ると、居室の内装や設備が傷んで物件価値が下がります。結果として空室が埋まりにくくなり、家賃を下げる必要がでてきます。また退去者も増えることが懸念されます。
賃貸住宅における原状回復のトラブル
賃貸住宅における原状回復のトラブルで多いのは、「敷金を超えた分の請求をした場合」「壁紙や床の交換費用の請求をした場合」「原状回復費用が高額な場合」などです。また敷金に関していえば、借主が支払う費用の一つで貸主が預かるお金のことをさします。賃料の不払いに対する担保であり、退去時の修繕費用に使われます。原状回復させるために敷金を使うということですが、この使い道で貸主と借主がトラブルとなることが多いです。
原状回復のトラブルを防ぐポイント
トラブルを防ぐポイントの1つ目は、入退去時に内装・設備の状態を確認するためのリストを活用して確認することです。
2つ目は入居時の状況を画像で残すことで、退去時の状況と比較できるようにしておくことが大事です。チェックリストがあったとしても細かな部分までは記載されておらず、画像を残すことでトラブルは起きにくくなります。
3つ目は、負担割合の詳細をしっかり決めておくことです。借主が負担割合を不服とし物件の評判を悪化させる行為を行うことがあり、このような場合には、入居者が減少する可能性が大きくなります。
まとめ
事業者のための原状回復ガイドラインを解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?貸主も借主も原状回復ガイドラインを把握しておく必要がありますが、詳細を知らなければトラブルになりかねません。特に貸主は熟知しておかなければ、借主が納得できるような対応がとれません。トラブルを起こさないようにするには、やはり入居時の状態を画像に残すことでしょう。退去時と比較できるうえ、スマホで撮ったとしても日付はしっかり記されています。画像が動かぬ証拠となり、トラブルを回避することが可能になります。あと大事なのはコミュニケーションをはかることで、信頼を深めるには重要なことです。物事は何でも人とのつながりによって成り立っているので、話し合うことが一番です。