原状回復特約が無効になる場合の条件とは?事業者向けに解説
公開日:2023/05/01 最終更新日:2023/04/05
事業者として原状回復について特約を結びたいと考えていても、特約の内容について知識が乏しいと無効になってしまう場合があります。一般的には立場が弱い借主に配慮して特約を締結することになるので、内容を正しく理解しましょう。必要な要項と有効な特約か判断するための基準について紹介するので、今後の参考にしてください。
原状回復特約とは何か?
本来の双方が負担する割合が変化するときがあります。この場合は、特約を締結する必要があります。きちんと内容を理解しましょう。
原状回復特約とは
こちらは、賃貸契約を締結するときに記載されている内容を指します。今までの状態に戻すときに貸主と借主の双方が負担する金額の割合を表しています。一般的には、経年劣化による回復は貸主負担、故意または予想の範囲を超えた損害を与えたときは借主が負担するようになります。
しかし、双方が合意した場合はこちらの内容を一部変更できるようになっています。特約を作成することで対応できるので、これまで貸主が負担していた元に戻すための費用を借主が負担するようになる場合もあります。
原状回復とは
賃貸物件を借りていた借主が、退居するときに賃貸契約を締結したときの状態に戻すことを指します。しかし、賃貸契約を締結したときから年月が経過しているので、完全に元の状態に戻すのは難しいのが一般的です。
たとえば、壁紙の汚れや小さい穴が壁にできるのは、室内で暮らしていると自然と劣化してしまうからです。そのような生活を送るときに自然に発生する傷などについて、借主は原状回復義務を負いません。たとえば、壁に大きく穴を開けた場合や壁紙の色を変更した場合は借主が負担します。
原状回復特約が認められる場合の条件
立場が異なるので、一方的な契約内容にならないように配慮しています。費用を負担するときも、借主が負担する金額が正しいものでなければいけません。第三者の目線で判断してください。
一方的な契約内容にならないように配慮している
賃貸契約を締結するときに、借主は貸主よりも立場が弱くなっています。そのため、貸主の一方的な契約内容にならないように配慮しています。いずれか1つまたは2つだけではなく、すべての要項を満たすことが必要となっています。こちらの内容は法律で定められているので、必ず守りましょう。
3つの要項
まず、客観的で合理的な理由があることが求められています。暴利的ではなく、必要性に迫られていることが求められています。次に、賃借人が特約により原状回復義務を超えた義務を負うことを認識していることが2つ目の要項です。こちらは、借主が特約の内容を正しく理解していることが求められています。貸主による一方的な特約となっていないことが前提です。状況により、原状回復義務を超えた義務を負担しなければいけないのは、借主にとってデメリットです。そちらについて正しく理解していることが重要です。
そして、借主が特約による義務を自分が負担する意思を表明していることが3つ目の要項です。こちらも、貸主による一方的な特約となっていないことが前提となっています。これらの内容をすべて満たさない場合は無効となるので注意しましょう。
有効な特約か判断するための基準
基準が明確に設けられているので、事業者は理解しなければいけません。特約の条文として適切なものにしなければいけません。分からないことはきちんと調べましょう。
借主が負担する範囲は明確になっているか
内容が曖昧になっていないことが大切です。借主がどの程度の費用をどのような場合に負担するのか明確に示す必要があります。たとえば、賃貸物件を退居するときに、ハウスクリーニングにかかる費用や、襖の張り替え費用などについて明記します。
借主負担は予測できるものか
借主が負担する金額が、あらかじめ予想できなければいけません。目安の金額が分かるようにします。たとえば、定期的に行われている襖の張り替えも1枚につき2,000円とするというような但し書きを加えるようにすると、きちんと負担する金額が分かるでしょう。ただし、襖を張り替えるときの料金相場と照らし合わせるようにします。
借主が原状回復義務以上の負担を負うことを認識しているか
本来は貸主が負担する金額を、借主が負担することについて、正しく内容を理解しているのか確認する必要があります。一方的な内容になっていないか配慮するためです。
借主の負担が妥当かどうか
異常に高額な費用負担になっていないことも重要です。相場よりも費用負担が高額になっている場合は認められないので注意しましょう。
まとめ
特約の内容を明確に借主に伝えることが重要です。そのためには、3つの要項をすべて満たす必要があります。また、3つの要項の内容が妥当性のあるものかどうか判断するための基準も設けられているので、1つずつ内容を確認しながら作業を進めていきましょう。ハウスクリーニング費用や襖を張り替えるときの費用などについての特約を多く見受けます。一方的な契約内容になってしまうと無効となってしまうので、内容は充分注意してください。分からないことがあれば専門家に相談しましょう。